熊本県の阿蘇山・中岳第1火口で36年ぶりの爆発的噴火が発生した。降灰は関西地方にまで届いた。地元では農作物に大きな影響を及ぼした。熊本県は地震に続いて水害、火山爆発と大変な状況にあり、お見舞いを申し上げたい。
風評被害が長引かないようにする必要がある。観光で当地を訪ねる旅の奨励は政府の補助金もあり、さまざまな旅行商品が企画されている。金額的な特典はあるが、その災害が起こったからこそ現場で学べることがあるはずだ。震災の対応と防災の備えを取り入れた企画が求められている。
今年は強い勢力のまま上陸や接近する台風があって、日本のみならず、台湾、中国、韓国にも甚大な被害をもたらした。ハイチや米国・フロリダを襲ったハリケーン「マシュー」は報道によると、870人もの死者を出すなど猛威を振るった。自然災害の驚異を報道映像で目の当たりにすると、想像の上をいくものばかりである。改めて、防災意識の醸成や避難訓練など備えの必要性が高まっていると考える。
同時に、地球温暖化対策の新しい枠組み「パリ協定」の発効が11月に予定されている中で、日本は対応に一歩遅れを取っている震災国であり、1997年の京都議定書を採択した議長国でもある。温室効果ガスの世界第5位の排出国としても、早期に批准国入りし、率先してその対策をリードしなければならない。
それが、わが身に降りかかる災いと大いに関係しているからである。火力発電所や工場、あるいは自動車などは大きな温室効果ガスの発生源である。ソーラーやハイブリッドなど技術革新は進んでいるが、さらに削減への期待がかかる。住民レベルでは、何ができるのか、何をすべきなのか、もっと国民的な議論や運動にしなければならない。
環境の問題では、農山村の獣害も極めて深刻である。作物を作る意欲さえ削がれている。環境省は、相次ぐクマの人的被害に対応すべく「クマに注意」の冊子を作って啓発している。
環境教育の必要性が説かれて久しいが、これほど普及も浸透もしていない分野は珍しい。学校教育の中で理科や化学ではなく、「環境」を教科として組み込む必要がある。それは机上学問ではなく、体験学習として位置づければ、すぐさま行動に移せるような教育効果が得られる。
体験プログラムでは、高層湿原観察、ブナ林観察、川の生物観察、渓流釣り、磯観察、マングローブカヌー、農作物生産、森林間伐などの森の保全、河川や海の生物生態に直結する漁業体験など、動植物の生態系から自然環境への理解を深めるものが、地域の特色とともに作られてきた。さらには当地ならこれだという目玉プログラムの開発も不可欠である。
人間は自然の中で生きている。ある時は自然の驚異に人間はなすすべもなく、無力である。共生というのはおこがましいが、その自然の中に生かされている人間が学び、保全し、後世に伝え残さなければならない使命がある。